エバンゲロス・マリナキス

ノッティンガム・フォレストのオーナーであるエバンゲロス・マリナキス ピッチ外の主役

──海運界からやってきた“サッカー王国”の建築者、エヴァンゲロス・マリナキス

ヨーロッパのサッカー界には、ときに“異物”とも言える強烈なパワーが流れ込んできます。そんな存在の代表格がギリシャの実業家エヴァンゲロス・マリナキス。彼の名前を聞いて、「ノッティンガム・フォレストの偉そうなオーナー?」「ギリシャで揉めてる人?」といった印象を持つ方も少なくありません。

しかし、マリナキスが単なる“揉め事の渦中の人物”で済むわけがないのです。もはや彼は、**“クラブ経営という名の征服者”**と呼ぶにふさわしい圧倒的な存在感を放っています。

経歴:ピレウスの海からフットボールの頂へ

1967年、ギリシャの港町ピレウスに生まれたマリナキスは、海運業界の大物である父ミルティアディス・マリナキスの後を継ぎました。彼は若くして自身の海運会社「Capital Maritime」を設立し、瞬く間に世界有数の海運王へと駆け上がります。

しかし彼の野望は海の上だけにとどまりません。2009年には地元ギリシャの名門サッカークラブ、オリンピアコスFCを買収。これを機に“マリナキス時代”が幕を開けました。

「買う」「変える」「勝たせる」の怪物オーナー

オリンピアコスでは就任後、毎年のように大型補強や監督交代を断行。ギリシャリーグで10回以上優勝を果たし、チャンピオンズリーグ常連の名門へと押し上げました。

2017年にはその活動の場を英国へ移し、かつて欧州王者に輝いたノッティンガム・フォレストを買収。ここでも彼の“革命”は止まりません。

  • 債務の肩代わりによるクラブ再建
  • トレーニング施設とスタジアムの大規模刷新
  • 女子チームのプロ化推進
  • 補強選手30人超えという前代未聞の補強祭り

「プレミアリーグ昇格?よし、全員入れ替えだ!」という豪腕ぶりで、実際に昇格と残留を成し遂げました。

“黒い噂”とギリギリの舵取り

ただ、その強引な手法には常に疑惑が付きまといます。ギリシャでは八百長疑惑、暴力事件、麻薬密輸、買収疑惑まで、司法や国際サッカー団体の調査対象に何度もなってきました。

しかし不思議なことに、決定的な法的制裁を受けることは少なく、「不死身の会長」と揶揄されるほど。かつてギャリー・ネビルが「ギャングだ」と評した発言でSky Sportsが謝罪したエピソードも、彼のカリスマ性を象徴しています。

それでも“英雄”と呼ばれる理由

ただの悪役かと思えばそうではありません。彼は地元ギリシャの貧困支援やインフラ整備に数千万ユーロを寄付し、ノッティンガム・フォレストでも地域コミュニティに深く関わり続ける慈善家としての顔も持っています。

「サッカーは勝利のための道具だが、地元を守ることは忘れない」というスタンスが、現地ファンの厚い支持につながっています。

次なる標的はどこか

彼が関わったクラブはギリシャのオリンピアコス、イングランドのノッティンガム・フォレスト、ポルトガルのリオ・アヴェ、イタリアのモンツァ、さらには謎のサウジ3部クラブヒウアブまで多岐に渡ります。所有するだけで空気が変わり、クラブが激変を余儀なくされるのがマリナキス流。

彼のクラブ経営は単なるビジネスやエンターテインメントではなく、“支配と改造”という強烈な理念のもとに動いているのです。

次にマリナキスが狙うのは、新たなクラブか、あるいは信用か、もしくは“清廉”という名の幻想か。

欧州サッカー界で最も強力で、最も謎多き男、エヴァンゲロス・マリナキス。これからも目が離せません。

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