──海運界からやってきた“サッカー王国”の建築者
ヨーロッパのサッカー界には、ときに“異物”ともいえるパワーが流れ込んできます。その代表例がエヴァンゲロス・マリナキス。名前を聞いて「フォレストの偉そうな人?」とか「なんかギリシャで揉めてるおじさん?」くらいの印象を持っている人も多いかもしれません。
でもこの人、「なんか揉めてる」だけで済むスケールじゃない。
もはや “クラブ経営という名の征服者”、それがエヴァンゲロス・マリナキス。
◆経歴:ピレウスの海から、フットボールの頂へ
1967年、ギリシャ・ピレウスで生まれる。
父はギリシャ海運業界の巨頭ミルティアディス・マリナキス。
その跡を継ぎ、若くして海運会社「Capital Maritime」を設立、世界有数の海運王に上り詰めます。
だが、彼の“征服欲”は海の上だけでは終わらない。
2009年、母国の名門オリンピアコスFCを買収。
そこから“マリナキス時代”が始まります。
◆「買う」「変える」「勝たせる」の怪物オーナー
オリンピアコスでは、就任から毎年のように補強&監督交代を敢行。
ギリシャリーグを10回以上制覇、CL常連クラブにまで押し上げる。
そして2017年、イングランドへ殴り込み。
かつての欧州王者ノッティンガム・フォレストを買収し、そこでも“革命”をスタート。
フォレストの債務を肩代わり
トレーニング施設&スタジアムを刷新
女子チームをプロ化
補強30人超えの“やりすぎ補強祭り”
…やることすべてがスケール外。
「プレミアに行く?よし、全員替えよう」
そんなノリでチームごとアップデートして、実際に昇格&残留も達成してしまうのがこの人。
◆“黒い噂”とギリギリの舵取り
一方で、その豪腕には常に疑惑がつきまとう。
ギリシャでは八百長、暴行、麻薬密輸、買収などあらゆる疑惑で司法にマークされ、FIFAやUEFAの調査対象にも。
だけど、なぜか毎回決定的なアウトには至らない。
無罪判決も多く、「不死身の会長」とも揶揄される始末。
ギャリー・ネビルに「ギャングだろ」と言われてSkyが謝罪した一件は、もはや伝説。
◆それでも“英雄”と呼ばれる理由
ではただの悪党か?それも違う。
実際、ギリシャでは地元の貧困支援やインフラ整備に数千万ユーロを寄付し続け、
フォレストでも地域コミュニティに深く関わる献身的な一面を見せている。
「サッカーは勝つための道具。でも地元は守る」
というスタンスが、地元民からの支持を生んでいる。
◆次に彼が“手を伸ばす”のはどこか
ギリシャ、イングランド、ポルトガル(リオ・アヴェ)、イタリア(モンツァ)…そして謎のサウジ3部クラブ・ヒウアブ。
この男が関わったクラブは、もれなく話題になり、変化を強いられる。
まさに“所有する”だけで空気を変える存在。
彼のクラブ経営は、ビジネスでも、エンタメでもない。
「支配と改造」。その一点に集約されている。
次にマリナキスが買うのは、新しいクラブか、信用か、はたまた“清廉”という名の幻想か。
欧州サッカー界で最も強く、最も怪しい男から、今後も目が離せません!
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